REPORT
レポート
5月の水あび「いろをみつける・いろをつくる」レポート
愛知県豊橋市のみずのうえ文化センターで2023年5月27日(土)、5月の水あび「いろをみつける・いろをつくる」を行いました。色鮮やかなストライプや円で構成された絵画を描く画家・今井俊介さんを招き、街で気になる色を見つけ、再現するワークショップで14人が参加しました。
カラフルなストライプ柄が重なり合う構図を描く今井さんは、絵画の基本的要素である、色、形、空間についての考察をもとに作品を制作する美術作家です。
ワークショップでは、まず、文化センターのある大豊商店街に繰り出し、気になる色を探しました。水路の上に立つ水上ビルのいたるところにかかる橋を見ながら、「狭間橋はグレーだけど黄色が入っている」と今井さんが解説すると、参加者は普段気に止めていなかった色を認識しました。
花屋に並ぶ季節のアジサイやクラフトビールを提供する店の軒先にある使い込まれた椅子、マンションの外壁に設置された看板、窓の格子。参加者は街に溢れる色を自分の中に取り込み、文化センターに帰りました。
続く再現では、シアンやマゼンタなど5色の絵の具を混ぜながら、目で見た色を思い出しながら再現する人もいれば、スマホで撮った画像を見ながら色をつくっていく人もいました。何度も何度も、混ぜる色の配合を変えながら、オリジナルの「色レシピ」を完成させていきます。
今井さんは各テーブルを回り、「記憶の色を再現しようとすると実際よりも鮮やかになる」「暗めの色をつくりたければ補色を足すといい」などと助言しました。
後半は豊橋技術科学大学の中内茂樹教授と対談
後半は、今井さんが視覚の機能とその背後で情報処理をする脳のメカニズムを研究する豊橋技術科学大学の中内茂樹教授と対談しました。中内教授は、抽象画の配色について国籍を問わず、原画の配色を一番好むという実験結果から、「人は美しい絵画を見ると自ずと心が惹かれ、脳が喜ぶようなメカニズムを備えて生まれてきているのではないか」と仮説を紹介しました。
続いて、アートが人生において必要不可欠な理由を脳のメカニズムを紹介しながら解説。「脳が喜ぶ体験がないと脳が健康にならない」として、アートに触れる重要性を説きました。中内教授は「努力して見るという経験が日常的にほぼない。スマホでググって、知識だけは入るが、ものをじっくり見る時間がどんどん少なくなっている。青信号が、緑色か青色か、帰りによく見てほしい。微妙な色だなと思う、それだけで多分脳は喜ぶと思います」と語りかけました。
今井さんは「色のことを集中して考えてみると、これ以降、世界の見え方が絶対変わります。そういう積み重ねが、生きていて楽しいところ。美術に限らずいろんなものを知っていく、考えることがすごく大事」と参加者に呼びかけました。