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9月の水あび「もやもや進路相談室~<クリエイターになる>ってなんだ?~」レポート

愛知県豊橋市の大豊商店街にある「みずのうえ文化センター」で2023年9月23日(土)夜、9月の水あび「もやもや進路相談室~<クリエイターになる>ってなんだ?~」が行われました。

講師を務めたのは、現在クリエイターとして活躍している若手4人。会社員とクリエイター業という2足の草鞋を履く人もいて、現場の悩みやクリエイターと名乗るまでの過程などを語りました。

もやもや進路相談室

 今回の進路相談室の相談員は、豊橋市こども未来館ここにこの企画展「ユーモレスク展−4人のクリエイターが送るアイデア小品集」(9月16日〜10月1日)に作品を展示した新進気鋭のクリエイターの皆さんです。

 まずは相談員をご紹介。

カナイガ
1999年生まれ。多摩美術大学を卒業後、会社員をしながらクリエイターとして活動。おやつと親父ギャグを掛け合わせた造語「おやつギャグ」をモチーフにした作品を、X(旧Twitter)やInstagramなどで発表している。代表作に「コーン約指輪」「いちごの将トケー棋」「たこ焼きの舟」。新評論より、作品集『おやつギャグつめあわせ』発売中。

 

FREE×
面白味のスパイスをふりかける人。アイデアを掛け合わせたり視点をずらすことで日常をもっと楽しく面白く。映像脚本、企画、演出、イラスト制作、講師など主に企業様のサポートを中心に活動。Instagramでは、子育てや日常を゛面白がる”をテーマにアイデアを投稿している。名古屋市在住、7歳児の父。

いまいません
自分が欲しいものを自己満足で制作するクリエイター。性別や年齢に関係なく、作りたいものを⾃由に作りたいという考えから、「固定の私が不在」という意味を込めて、いまいませんと名乗っている。 代表作に「本の表紙が低画質になるブックカバー」「忍者の印鑑 N印JA」などがある。著書「自己満足のデザイン 無名からSNS発デザイナーへ」が実業之日本社より発売中。

もしもカンパニー
1996年、愛知県生まれ。プロダクトデザイナー、アーティスト。2022年から、もしもカンパニーという名前でデザイン活動を開始。日用品に新たな価値を見いだし、鑑賞者には日常で起こる無意識な所作やあるあるなどを感じさせ、懐かしさや親しみ、共感を与える作品を目指す。2023年4月には「雨ときどきわたし」の個展を開催。その他、名古屋造形大学の非常勤職員、ふしぎクリエイティブアシスタント講師。

 

 −なぜクリエイターになったのか? 現在までの経歴を教えてください。

カナイガ:クリエイターになった明確なきっかけはありませんが、小さい頃から一人で黙々とものを作るのが好きでした。小学生の時に、NHKの番組に影響されて、自宅のパソコンで映像制作ソフトを使ってアニメーションのようなものを作り、それをYouTubeにアップしたり、番組に応募したりして、人に作品を見てもらい、感想をいただくようになりました。「人に発信するのって楽しいな」と思い、X(旧Twitter)で発信を始めました。高校、大学とどんどん作品を公開するうちにクリエイターと呼んでもらえるようになりました。

 

FREE×:昔からお笑いが好きで、大喜利にもハマっていました。前職はウエディングプランナーで、その会社は余興が盛んだったので、自分でコントの台本を書いて披露しました。それがものすごく好評で、だんだん広がり、「ちょっと(笑いのスパイスを)振りかけてくれる?」と依頼が来るようになり、独立しました。

 

いまいません:元々、小さい頃からものづくりは大好きでした。大学を卒業後、ブラック企業に就職したことで心のバランスを崩し、心療内科に通うようになりました。その時期、本当にやりたいことで人生を謳歌したいと思い、転職して東京でグラフィックデザイナーになりました。ただ、周りは美大出身のデザイナーだらけで、バリバリデザインができる人たちに囲まれており、居場所がなくて、逃げるように会社を辞めました。無職の期間に、初心に帰り、自分が制作して楽しいものを作っていこうと決意しました。その流れで、制作した作品を自慢する感覚でX(旧Twitter)にアップしていたら、じわじわ反応をもらえるようになり、今のスタイルになりました。

 

もしもカンパニー:学生の頃、家具をデザインしたいと先生に相談したところ、美大進学を勧められました。予備校で年1回やっている展覧会に出品する作品を考える時に、家具は作れないので、飛び出す絵本のようにイスが飛び出す作品を作りました。それがアイデア系の最初のきっかけだったと思います。

 

 −昔と今で作品の違いはありますか?

カナイガ:小学生の時はパソコンを使ってキャラクターを作り、ヒットさせたいと思っていましたが、作り進めていくにつれて、自分の好きが自然に入ってくるようになりました。小さい頃から食べ物に関心があって、川のせせらぎの音が肉を焼いているような音だなぁと思い、近所の川を焼肉屋さんと呼んだり、自由帳にオムライスの絵ばかり書いているような子でした。作っていくうちに、自分の好きなものが見えてきて、「どんどん入れてみよう」と繰り返してきました。自分が好きなのは、食べ物の見た目が好きなんだと気づいて定着しました。

 

FREE×:作品化とクオリティを上げることです。言葉遊びが好きだったので、浮かんだアイデアを言葉でX(旧Twitter)上でつぶやいていました。僕はカナイガさんの影響を受けていて、過去投稿を見て研究しました。そこで僕との違いは、アイデアを形にして写真をきれいに撮ることだと分かりました。息子が家の中を走り回って大変なので室内に道路標識「止まれ」を作った作品は、アイデアを言葉にするだけでなく、実際の廊下にテープを貼り、写真をきれいに撮ることでSNSで話題になりました。言葉だけじゃなくて、実際に形にしてみる、そのクオリティを上げていくことがポイントになると思い、最近はそこを意識しています。

 

いまいません:昔から自分が好きなものを作る、というのは変わっていませんが、どこが好きなのかを言語化して説明できるようになったのが大きな違いだと思います。欲望に忠実に作るようにしているので、自分が喜ぶものができれば、それがゴールだと思っています。今の作品シリーズも作り続けようとは思っているが、やりたいことがどんどん変わるので、「自己満足」というコンセプトを軸に、様々なコンテンツを作りたいと思っています。

 

もしもカンパニー:予備校時代の飛び出すイスの絵本のときから作風は全く変わっていない気がします。ただ、最近発表したイチョウの絨毯の作品は、少し変わったと思います。枯れ葉の絨毯を言葉の通りに作ってみましたが、展示方法はいつもと違い、制作段階で調査したイチョウについての情報を日記にして展示しています。ものだけで完結するのではなく、背景を見せられるような作品になっています。完結せずに、違う場所でつなげられたらな、という思いがあって、変わっているとしたら今です。

 

 −本職を持ちながらクリエイターとして活動している方は、忙しい中で創作活動を続ける理由を教えてください。また、本職の方は仕事としてやっていけるのか、どれくらい頑張れば一人前として認められますか?

 

 

カナイガ:私は副業としてカナイガの活動をしています。ただただ楽しいからこのおやつギャグの活動をやっているというのがすごく大きいですね。自分が楽しく作ったものを発信することで、見てくださった方も楽しいと言ってもらえるのがすごく嬉しくて、ほとんどその気持ちだけで続けています。カナイガの仕事だけでやっていくという選択肢は、ゼロではありませんでしたが、正直不安もありましたし、会社でしか学べないこと、できない仕事もたくさんあるだろうと思い、社会人2年目の今は同時並行で活動しています。無理のない範囲で続けていて、最近は気が向いた時に作品を作っています。仕事のリフレッシュにもなっています。本職の会社もクリエイティブ系なので、カナイガの活動にも良い影響があるなと感じています。2つの軸を持って生活していくのは自分的にはすごく良いなと思っています。

 

FREE×:僕は本業として活動しています。独立して1年半くらいで、お金の話をすると、正直必死ですね。内心はすごく不安ですが、なんとかやっています。独立前に働いていた会社は働きやすいような仕組みを作ってくれて、副業のような形でやらせてくれていました。独立を迷っている時に、庭師をしている妻のお兄さんから、「中途半端で、覚悟を示していないと、周りも発注していいのか分からない。『独立しました。よろしくお願いします』と頭を下げてやれば、誰かしらが助けてくれる。その覚悟を示さないといけない」と言われて、この言葉がとても刺さり、独立しました。

 

いまいません:私は本業があるので、今の活動は副業という扱いだと思いますが、お金儲けをやりたくてやっている活動ではなく、あくまで遊びの延長でやっています。自分なりの信念を持って作っていればクリエイターとして一人前だと思っています。人によって目指す目標は違いますが、こうなりたいという目標や、遊びでやるのか本気でやるのかをある程度決めてから活動する方が、クリエイターとしての軸がぶれないような気がします。

 

もしもカンパニー:本業として頑張っていこうとしています。名古屋造形大学の非常勤職員として働きつつ、創作をしています。見立てるという手法を使って作品を作り、フフっと笑えるような作品を届けたいと思っています。大人になるほど既成概念が増えて、いろんな角度から物事を見れなくなってしまっている気がします。ものをいろんな角度から捉えられるということは、ポジティブにもネガティブにも捉えられるということ。ということは、人はとても辛い状況にあってもポジティブに捉えられるのではと思っていて、ものはこういう風にも見えるんだよというのを伝えたいです。将来的には自分のお店を持ち、ワークショップや創作活動をしていきたいです。本業で自分の店を持つまでが勝負だと思っています。

 

 

 後半は、4~5人ほどの参加者が各クリエイターを囲む座談会を開催。「会社員とクリエイターの切り替えはどうしてる?」と言う質問に、カナイガさんは「切り替えは意識していません。気持ちが動いた時に作っています」と回答。また、アイデアの出し方について、FREE×さんは「家族の前だとスイッチを切っていたが、子育てがうまくいかない時にFREE×ならどうするか?と、FREE×の人格を降臨させることでアイデアが出てくる」と話しました。他にも、参加者のキャリアでの悩みに答えたり、ゲームを自作する男子高校生の進路について話したりと、少人数ならではの和やかなムードでイベントは終わりを迎えました。