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6月の水あび「感じる、覚える、作るー手でみる彫刻作り体験」レポート

2023年6月24日(土)、マレーシア出身の美術家タン・ルイさん=静岡県袋井市在住=を講師に迎え、大豊商店街にあるみずのうえ文化センターでワークショップ「感じる、覚える、作るー手でみる彫刻作り体験」を開催しました。視覚障害者を含む小学生から60歳代までの参加者16人はアイマスクを付け、視覚に頼らず手の感覚だけで立体物を作っていきました。

6月の水あび

タンさんは、ダンボールや洗濯バサミ、付箋など、身近にあるものを使い、立体物を作っています。今回は7月2日まで、豊橋市のこども未来館ここにこで開催されている企画展「うむ、ふえる、あふれる展 – 空想生物を生み出そう!-」の連動イベントとして開催しました。

6月の水あび

みずのうえビジターセンターの2階に集合した参加者は、アイマスクを付けた状態でスタッフに手を引かれながら3階の会場へ移動。階段も慎重に登り、椅子に座ると、ワークショップ開始まで静かに待っていました。

6月の水あび

タンさんが「この声が私の声です。忘れずに覚えていてください」と参加者に呼びかけた後、午後1時過ぎワークショップがスタート。机の上には、小さなハムスターのぬいぐるみや有名キャラクターのフィギュア、動物の置物などが並び、一人一人、触感だけを頼りにモチーフを決めていきました。

今回は12色のこむぎねんどを組み合わせて立体物を制作。モチーフに触れ、感じ、時々周りの人とおしゃべりしながら手を動かし、目で見る創作にはない感覚を体験していきました。途中、使いかけのねんどを置いた場所が分からなくなり、違う色を使い始める参加者も。ねんどを伸ばしたり、穴を開けたりする道具も、たくさんの道具が入ったケースから形状を想像しながら探していました。

完成したら今度は参加者同士の作品を手で捉えながら鑑賞。「この作品、色をたくさん使っている気がする」「モチーフよりも小さい?」などと想像を膨らませながらの鑑賞を楽しんでいた参加者は、ここでようやく、アイマスクを外しました。目で見ると全く違う形状の人や、モチーフの個性を的確に捉えている人など、出来栄えはさまざま。視覚に障害のある女性の参加者は、髪の毛の線にまでこだわり、フォルムもそっくり。「見えていたことがあるので、色は自分独自の配色にしました」と作品を紹介しました。

参加者は「音がすごく入ってきた。BGMの水の音が神秘的で自分の世界に没頭して作りました」、「モチーフが全く分からずに何度も諦めそうになった」「終わった後、とても疲れたことを気付きました。耳も手もとても集中していたんだと思う」と感想を口にします。

最後にタンさんは、「目で見る対象がなければ想像は働くようになります。その想像は無限大であり、無の空間となります。このワークショップでは、目以外の感覚や直感にも意識を向け、見るという意味を再認識してもらいました。みなさんの感想や作品を通じて、新たな発見や表現方法の可能性が生まれることを期待しています」と締め括りました。